
■連邦公開市場委員会
5月3・4日の二日間に渡って開催されていた米国の政策金利を決める連邦公開市場委員会(FOMC)が閉会しました。
米国の中央銀行である連邦公開市場委員会(FRB)は米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レート(略してFFレート)を0.50%引き上げ、0.75%~1.00%としました。
加えて6月1日より連邦準備制度総資産の圧縮、いわゆるQTにも着手することが発表されました。6月に関しては米国財務省証券を300億ドル、住宅抵当証券を175億ドル、合計475億ドル圧縮します。その後圧縮の金額をだんだん増額し、3か月後には毎月950億ドルの減額ペースへ持ってゆくと発表されました。
以上のことは全て市場参加者の予想通りの内容でありサプライズはありませんでした。
■次回の利上げ幅について
パウエル議長の記者団との質疑応答の中で最も重要なディスカッションは記者の「次に0.75%利上げするというシナリオはあるのか?」という質問に対し、パウエル議長は「いまはそれは考えてない」と答えた事でした。
今日のFOMCに先立ち市場関係者は(ひょっとすると6月のFOMCでは0.75%の利上げが発表されるのでは?)というのがかなり強いコンセンサスになっていました。
そのシナリオが消えたので市場は安堵し、株式が買われたというわけです。
■粛々・整然と利上げし、はやく中立的政策金利へ持ってゆく
パウエル議長は「現在のFFレートはインフレを誘発したり逆に景気の勢いをそぐことのない、いわゆる中立的政策金利とは残念ながらほど遠い水準だ。しかし粛々・整然と利上げすることでなるべく早い段階で中立的政策金利に持ってゆきたい」と語りました。
具体的に中立的政策金利がどの水準を指すのかはFRBは明示してないものの多くの市場参加者はそれがFFレートで2.50%くらいだと考えています。
いま市場参加者はパウエル議長のそのようなメッセージを額面通り受け止め、債券価格にそれをしっかり織り込んでいます。それからもわかる通りFRBはクレディビリティー(=投資家からの信頼)を失っていません。
このような巧みな話術による市場参加者の期待の誘導をフォーワード・ガイダンスと言う場合もあります。明確なフォーワード・ガイダンスが示されることで、まだ実際の政策金利はFRBが到達したいという水準には達していないものの、少なくとも投資家の気分としては、もうそれが間違いなく起こるものだと思い込むムードが醸成されています。
このムードが足元の金融コンディション(=お金の借りやすさに関する心理)に働きかけ、それが引き締まり感を醸し出すことでインフレ抑制へと働きかけるわけです。
もっと平たい言い方をすれば「すでにトークはインフレ抑制効果を発揮しはじめている」ということだと思います。
■まとめ
今日のFOMCではサプライズはありませんでした。しかしパウエル議長が次回の会合で0.75%利上げするシナリオを退けたことで投資家は安堵し、株式は買われました。
「FRBは、慌てず、焦らず、粛々とやるべきことをやってゆく」というメッセージが明確に打ち出されたので市場参加者の安心感は増したと思います。