
■軟調な米国株
年初から米国株が下げ基調です。年初来のパフォーマンスはS&P500指数が-15.6%、ナスダック総合指数が-24.5%です。
米国では-20%がベアマーケット(弱気相場)と定義されているので、すでにナスダック総合指数はベアマーケットに入っています。
■株式が嫌気される理由
なぜ株式が嫌気されているのか? という問題ですが、それはインフレに端を発しています。米国のインフレは+8.3%になっています。

米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が米議会から言い渡されているインフレのターゲットは2%です。すると8.3%は努力目標よりずっと悪い数字だということがお分かりいただけると思います。
インフレは庶民の生活、とりわけ低所得者層を直撃するので早く抑え込まなければいけません。
FRBは既に3月に0.25%、5月に0.50%の利上げを敢行し、引締めを開始しています。6月、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)でもそれぞれ0.50%の利上げが行われると思います。
金利の上昇は株式バリュエーションにとって悪いです。だから株価がズルズル下がったのです。
■いつ引締めの手が休められる?
すると我々が問題にしないといけないのは「いつ引締めの手が休められる?」ということです。
残念ながらそれは当分先のことになりそうです。
それというのも政策金利は長期の積み重ねが累積的にじわじわ効力を発揮するという性格のものであり、1回や2回の変更ではビジネスマンや消費者の物価に対する考え方に働きかける力は弱いからです。
なかでも賃金インフレはクセになりやすいといわれています。その点、企業がどれだけ労働者を探しているか? の指標となる非農業部門求人数は極めて高い水準にあります。

ひとりの求職者に対して1.7の働き口があるため、完全な売り手市場になっています。
それを背景に平均時給もじわじわ上昇しています。

この賃金インフレをどう抑え込むか? が目下のFRBの大きな課題であり、ちょっとやそっとの努力では冷やすのは無理というのがコンセンサスになっています。
■株式バリュエーション
このところの株安でS&P500の向こう12か月の予想一株当たり利益(EPS)に基づく株価収益率(PER)は16.6倍まで下がってきました。過去10年の平均が16.9倍なので米国株は割高ではありません。
■テクニカル
一方、テクニカル的にもプット・コール・トレーディング・ボリューム指標は0.99(IBD調べ)と高い水準になっており何時反発してもおかしくない状況です。ブルベア指数(インベスターズ・インテリジェンス調べ)も強気が27.6%、弱気が40.8%と極端な弱気に傾いており訂正が入るべき水準です。
■結論
以上のことから目先の米国株は反発が期待できると思います。しかしその場合でもFRBによる利上げは粛々と継続してゆかなければいけないのでラリーの持続性は大いに疑問です。