トランプの対中政策が相場の分岐点になる?

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トランプ=蔡英文電話会談

122日(金)にドナルド・トランプが蔡英文(さいえいぶん)中華民国総統と電話で話しました。これは過去40年近くも米国で守られてきた「台湾のリーダーとは直接口を利かない」という外交プロトコルを無視する行為です。

今回の電話はボブ・ドール元上院議員が斡旋したもので、台湾側は総統だけでなく、外交、国防関係の閣僚が同席し電話会議に臨みました。

つまり周到に計画されたものであり、軽はずみな慣習破りではないということです。

 

台湾の孤立

台湾は、経済的には、半導体産業やハイテク産業を中心に、世界経済にがっちりと組み込まれています。

しかし政治的には中国の「One China」政策により国際社会からシャットアウトされており、台湾の人々は閉塞感を感じています。

 

チャンスを狙いすました電話外交

蔡英文総統は、政治家というよりも「お役人さん」上がりの女性です。だから派手な立ち回りをするタイプの人ではありません。

しかし今回は稀にしか出現しない偶然が重なりました。

先ず中国に対して批判的なドナルド・トランプが大統領に当選しました。

つぎに彼が大統領に就任するまで一ヶ月半の時間的猶予があり、いまなら私人として祝福の電話を受けることが出来ます。

このチャンスを狙いすまして、計算し尽くされた電話外交に出たのです。

なお、台湾側はこの発表の後で「今回の電話は大統領当選の祝福の意味合いだけであり、他意は無い」と明言しました。

トランプ側も「今回の電話は表敬だけであり、これから台湾との関係を次のステージに持っていくような意図はない」とコメントしています。

つまり、「今回のところは、ここまで」ということです。

 

メンツをつぶされた中国

中国は何よりもメンツというものを重んじます。今回の台湾の電話外交は、中国からすればメンツをつぶされたと感じるでしょう。

トランプ側は、今後中国と貿易交渉をしてゆく際、「台湾」というカードを持つことで中国の弱味を握ることが出来ます。

実は米中関係の雪解けは1970年代にリチャード・ニクソン大統領が画策したことです。

当時の状況と、今回のトランプと台湾の歩み寄りには、奇妙な共通点があります。

それと言うのも、当時、アメリカはベトナム戦争から足を洗いたいと考えており、ケネディ大統領やジョンソン大統領が戦争終結を試みましたが失敗しました。

中国は北ベトナムを支援していましたが、その当時、ソ連と折り合いが悪くなっていました。

アメリカとソ連は敵でしたので、「敵の敵は味方」という考えから、ニクソンは中国に接近、中国の側からも北ベトナムを説得するよう要請するわけです。

これが泥沼化したベトナムにおける均衡を打破する決め手となり、その後、アメリカはベトナムから撤退に成功します。

 

トランプの場合、これから中国と貿易問題で一戦を交えるにあたって、中国の敵である台湾と仲良くしているところを見せ付ければ、米中の貿易交渉を有利に運ぶことが出来ると考えているフシがあるわけです。

 

トランプの独走にブレーキを踏む米国議会

トランプは「中国製品に関税をかける」というツイートをし、貿易問題を議案に取り上げる姿勢を見せました。

 これに対しポール・ライアンなど議会の主要メンバーは「まず税制改革からやりましょう」とトランプをけん制しています。

 

税制改革が先か、関税問題が先か?

 

これは米国株式市場の今後のパフォーマンスを占ううえで、カギを握る重大な問題です。もし税制改革が後回しにされるような気運になれば「万事休す」です。そのシナリオでは株、ドル、金利は下がると思います。