
ECB政策金利会合
12月8日(木)に欧州中央銀行(ECB)の政策金利会合があり、声明文が発表されるとともに記者会見が行われました。
政策金利は変更なし
まず政策金利には変更はありませんでした。それらは:
政策金利(Main refinancing operations rate)は0.00%(変更なし)
上限政策金利=限界貸出金利(Marginal lending facility rate)は0.25%(変更なし)
下限政策金利=中銀預金金利(Deposit facility rate)は-0.40%(変更なし)
です。
資産買入れプログラムは延長されたが、減額になった
つぎに2016年3月10日の政策金利会合の際に拡大された資産買入れプログラム(毎月800億ユーロ)は、毎月600億ユーロに減額されました。
その代り、2017年3月で終了する予定だったこの資産買入れプログラムは2017年12月まで延長することが決められました。また必要に応じては、2018年以降も資産買入れプログラムを継続する意図があることが表明されました。
購入対象は拡大された
記者会見の中でドラギ総裁は:
- 下限政策金利=中銀預金金利(Deposit facility rate)の-0.40%以下の利回りで取引されている債券も、購入対象に加える
- 償還が2年以内に迫っている債券も、購入対象に加える
という追加的な措置を発表しました。
下限政策金利=中銀預金金利の-0.40%以下の利回りで取引されている債券をECBが購入すると、それはECBにとって直ぐに「逆ザヤ」になってしまいます。この点に関して記者団から質問が出ましたが、ドラギ総裁は「ECBの使命は価格の安定であり、ECBの利益を増やすことではない」と説明しました。
また償還が2年以内に迫っている債券を購入対象に入れることは、EUメンバー国の短期の財政のやりくりに対して、実質的にECBが直接関与、手助けすることになるという批判がありますが、今回の発表はその声を押しのけて実施に踏み切ったことになります。
ECBによる欧州経済の評価
このような一連の決断に至った背景として、ユーロ圏の第3四半期GDPは+ 0.3%で拡大しており、これは第2四半期と同じペースであること、別の言い方をすれば経済拡大はゆっくりとした着実なペースで続いていることが指摘されました。
また内需はECBの支援的政策に支えられる格好で堅調であり、雇用も回復しつつあるとしています。
これらは可処分所得の伸びや消費を支援しているとしています。
その反面、欧州における経済の構造改革は遅れており、引き続き中央銀行の支援を必要としているとECBは判断しました。
減額だが、先細りのテーパーリングではない
だから、市場関係者から(ECBはテーパーリングによって支援を縮小しはじめた)という風に解釈されることには大変、気を使っています。
ドラギ総裁は記者会見の中で「テーパーリングというのは、購入額がだんだんゼロに近づくような方針を指す。今日、ECBが発表したのは、このようにだんだん減額するプログラムではない」と言明し、減額は一回きりの措置であることを強調しました。
まとめ
今回の発表では「600億ユーロに減額」という見出しに市場参加者が反応したため、直後にはユーロが買われました。しかし記者会見でのドラギ総裁の説明をていねいに読み解けば、決して引締め一辺倒の内容ではなかったと思います。
ECBが今後も自由に動き回れる余地を、期間延長と購入対象の拡大という2つの面から確保しつつ、金額自体は600億ユーロということで少し減額した……そういう内容だったと思います。