メキシコ国境の壁建設が税制改革ならびに連邦政府の予算に与える影響について

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メキシコ国境の壁建設へ

先週、トランプ大統領が「公約通りメキシコ国境に壁を建設する」と発表しました。

 これに対しメキシコ側は反発しました。

 両国の関係がこじれたことを受けて、大統領同士のトップ会談はキャンセルされました。

 

建設費用を誰が負担するか?

当初、トランプ大統領は「壁の建設費用はメキシコ側に負担させる」と主張していました。しかしトップ会談がキャンセルになったので、費用負担に関する話し合いの機会が失われてしまいました。

 これを受けてホワイトハウスは「メキシコからの輸入品に20%の関税をかけることを考えている」と発表しました。

 関税をかけることで、「実質的にメキシコに費用を負担させたのと同じことになる」というわけです。

 

建設費用は幾ら?

壁の建設費用は、下院がいろいろな建設プランを検討し、承認することになります。

 デザインによって総費用には大きな開きがありますが、100億ドルから200億ドルという数字が浮上しています。

 

「前借り」というやり方

建設に着手するためには、政府がそれを国家予算から「前借り」する必要があります。

 これは微妙な問題です。

 

なぜなら、そうでなくとも連邦政府は慢性的に予算オーバー気味に運営されており、債務上限規定に抵触スレスレだからです。

 ただでさえカツカツのところを、メキシコの壁建設のために200億ドルを承認してしまえば、米国政府がデフォルトするリスクが高まります。

 

「いっそデフォルトすれば?」という極論

驚いたことに下院共和党議員の中には「いっそのことデフォルトした方が良い」と考えるメンバーも居ると言われています。

 その理由は、これまで何度も、なし崩し的に債務上限を引き上げてきて、財政規律が骨抜きとなっていることに、心底、怒りを感じているからだそうです。

 

メキシコの壁建設資金を政府が用立て、抜き差しならない「待った無し」の状況に自分を追い込めば、懸案の税制改革法案を大至急成立させなければいけなくなるだろうという「読み」が、そこにあるわけです。

 しかし米国財務省証券に投資している投資家は、そんな冒険に付き合わされたく無いでしょう。

 

メキシコ製品に35%の関税をかけるはずが、なぜ20%に?

ところでトランプ大統領は、かねてから「メキシコ製品に35%の関税をかける」と主張してきました。それが先週、突然、20%に下がったのです。

 これはトランプ大統領の譲歩を意味するのでしょうか?

 

たぶん、そうではないと思います。

 20%という数字は、もともと下院共和党議員が去年の6月に公開した税制改革案「Better Way」の中に盛り込まれた、国境税調整という名前の関税の税率です。

 

もしこの税制改革法案が成立すれば、メキシコに限らず、中国や日本を含めたすべての外国製品に一律20%の国境税調整がかかるため、「実質的にメキシコを懲らしめたのと同じになる」というわけです。

 

これは下院共和党議員が発想し、これから審議に入ろうとする法案であって、行政府であるホワイトハウスの手柄ではありません。

 しかし国民に対する説明としては、あたかもホワイトハウスの手柄のような印象を与えることが出来るのです。

 

トランプ大統領は国境税調整が嫌い

トランプ大統領自身は「国境税調整というプランは複雑すぎて、好かん!」と、事あるごとに下院案をけなしてきました。

 そのことから考えて、今回ホワイトハウスから「20%の関税をかける」というコメントが出たのは、かならずしもトランプ大統領が下院に「歩み寄った」ことを意味しないと思います。

 

だから先週のコメントは、むしろその場を取り繕うための咄嗟の発言と言えそうです。

 

小売株は最悪シナリオを織り込み始めた

ただ市場参加者は(そうか、ホワイトハウスは下院に歩み寄る用意があるのだな)と受け止めました。つまり下院案の成立の可能性が急に高まったという印象を持ったのです。

 

これで驚いたのは小売業です。

 ディスカウントストアや専門店で売られている洋服、家庭用品、家電製品の多くは外国製です。

 

従って国境税調整が成立すると、仕入れ値が跳ね上がることが予想され、消費者の買い控えを誘発し、売上高が激減するリスクがあります。

 先週末にかけて米国の小売株が売られたのはこのためです。

マネーハッチ