下院税制改革法案にトラブルの兆し

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まだスタート出来ていない下院税制改革法案

ドナルド・トランプが大統領に就任してちょうど一ヶ月経ちました。投資家が期待したことは共和党が全速力で税制改革に取り組むという事です。

 しかし先週あたりから(どうやら税制改革法案の通過は、ずっと遅れそうだな)という認識が広がり始めています。

 投資家がそう感じ始めた理由は、ポール・ライアン下院委員長のスポークスマンが「まず予算審議、次に法規制の見直し、その次にアフォーダブル・ケア・アクトの修正、そして最後に税制改革法案に着手する」とコメントしたためです。

 その順番だと今年中に税制改革法案が成立するのは絶望的です。

 

小売業者からのしつこい抵抗

下院が税制改革法案を後回しにせざるを得なくなった背景には、下院税制改革法案、いわゆる「Better way」法案に盛り込まれている国境税調整(Border tax adjustments)が小売業者から強い反発を買っていることがあります。

 国境税調整は、1)輸入品に一律20%の関税をかける、2)輸出は無税とする、という2つの要素から成っています。

 小売業者は中国製の電化製品やベトナム製の洋服など、安い海外製品を輸入し、それを販売することで利幅を得ます。したがって国境税調整により輸入コストが跳ね上るのは死活問題です。

 

代替減税原資になるものが無い

もし下院税制改革法案から国境税調整の項目を取り除いてしまうと、国境税調整から得られる、向こう10年間で1兆ドルにも上る税収をアテに出来なくなります。

 すると下院案に盛り込まれていた、「法人税を現行の35%から20%にする」という減税案も実施が困難になってしまうわけです。

 下院税制改革法案を策定したメンバーは、財政保守派が多く、「税制改革をしてもアメリカの財政赤字は増やさない」という考え方をしています。だから国境税調整が「NO」ということになると、のっけから勢いが殺がれるわけです。

 

トランプ案

さて、以上は下院の税制改革法案の現状に関する説明でしたが、下院案とは別にドナルド・トランプ大統領も「トランプ案」を近く発表する予定です。

 大統領選挙を通じてトランプが公約してきた税制改革は、所得税率を現行の7段階から3段階に簡素化する(=これは下院税制改革法案と同じ)ということに加えて、法人税率を現行の35%から一気に15%へ引き下げる、中国製品に45%、メキシコ製品に35%の関税をかける、などです。

 ただトランプ案は均衡財政という視点を重視しておらず、それがそのまま実施されると米国の財政赤字は向こう10年間で4兆ドルも増えてしまうと試算されています。

 今回発表されるトランプ案が、この原案からどれだけ変わっているか? に注目したいと思います。

 

経済、市場へのインパクト

さて、市場参加者は今回の税制改革がアメリカ経済の成長を強力に加速させる推進力を提供すると考えてきました。

 そのシナリオではGDP成長率は高まり、インフレ圧力も高まり、長期金利も上昇し、ドルも強くなると考えられてきたわけです。

 しかし今年中の税制改革法案成立が無理ということになると、それとは逆の圧力がかかる可能性もあると思います。

  

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