下院共和党ヘルスケア・プランの途中経過について

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

■投票延期

今日に予定されていた下院共和党ヘルスケア・プラン(AHCAの投票が、明日以降に延期されました。

延期された理由は、現在、賛成を表明している下院共和党議員の数が過半数に満たないからです。

下院の定数は435議席です。しかし現在、5議席が空席になっているうえ、民主党のボビー・ラッシュ議員(イリノイ州選出)は妻が死んだばかりなので今回の投票に参加しないと伝えています。したがって、現在の有効投票数は429、過半数は215という計算になります。

下院の共和党議員は237名居るのですが、そのうち28名前後が「NO」の票を投じると言っています。すると「YES」は209票前後となり、あと6票ほど足らないわけです。 

下院の共和党は一枚岩ではなく、いくつかのグループを形成しています。そのうち最も財政保守派と言われているのが同法案に反対の立場を取っているフリーダム・コーカス(Freedom Caucusと呼ばれる一派です。

フリーダム・コーカスに所属する議員の多くはトランプ大統領が大統領選挙戦で大勝した州を代表しており、トランプ大統領が「組み易し」と判断した議員たちです。

ところが今日行われたフリーダム・コーカスとトランプ大統領は、和やかな中で執り行われたにもかかわらず、溝を埋めることは出来ませんでした。

 

■投票に持ち込めなかったことが持つ意味

今日、トランプ大統領直々の説得にもかかわらず、下院がヘルスケア法案を投票に持ち込むことが出来なかったことは交渉ごとに自信を持っているトランプ大統領にとって、ぶざまな体たらくをさらけ出す結果となりました。

これは別にトランプ大統領が悪いというわけではなく、そもそも立法のプロセスというものが、交錯する様々な利害の中での困難な調整の繰り返しであり、一筋縄ではゆかない性質のものだからと解釈すべきでしょう。

かつて連邦下院議長を歴任したこともあるジョン・ベイナー議員は「下院の立法プロセスは、手押し車に218匹のガマ蛙を載せて、それがこぼれおちないようにしながら走るのに似ている」とコメントしましたが、まさしくそのような難しい作業なのです。

これまで投資家は(下院、上院、大統領のすべてを共和党が牛耳っているから、法案成立はカンタンだろう)と楽観視していたわけですが、実際には、ものごとはそれほど簡単ではないことが今日の失敗で痛感されたのです。 

しかし、今日、票決に持ち込めなかったから下院共和党ヘルスケア・プランは死んだのか? といえば、それはそうではありません。これから幾度かの曲折を繰り返しながら、最終的には法案成立まで持ち込まれると考えるのが自然だと思います。 

ただトランプ政権がこれまで主張していたような「ヘルスケア・プランは4月までに成立させ、次に連邦予算をサッサと片付けて、8月に議会が夏休みに入る前までに税制改革法案を成立させたい……」というシナリオは、すこし考えが甘すぎることがわかったわけです。

 ■諸法案成立の遅れが経済やマーケットに与える影響

順番として1)まずヘルスケア法案を成立させ、2)次に連邦予算を策定し、3)最後に税制改革法案に着手する、という手順は、立法に際する技術的な理由で、その順番を変更することは不可能です。 

すると投資家待望の税制改革法案は、当初の予定より遅れることが可能性として考えられます。 

今回の税制改革法案は5兆ドルにものぼる減税となる可能性があり、それは強烈に景気刺激的であり、かつインフレを誘発しやすいです。 

市場参加者はそのことを心得ているので、ドル高、金利高のシナリオでアウトパフォームしやすい原資産に投資してきました。

しかし実際にはドルはこのところ弱含んでいますし、長期金利も下落基調です

つまり市場参加者の目論みとは逆の方向へマーケットは動き始めているということです。

 

現在の時点では、景気のつんのめりというようなシナリオは想定する必要は無いとは思いますが、これまで多くの投資家が考えてきた「景気は、とうぜん強い!」という大前提は、すこし割り引いて考えなければいけなくなっているのかもしれません。

 

  

コメントを残す

*