
ダドリーNY連銀総裁発言
先週金曜日引け後にニューヨーク連銀のウィリアム・ダドリー総裁がメディアとのインタビューの中で「我々がFRBのバランスシートを縮小すると決定したときは、一旦、政策金利の引上げをお休みするかもしれない」とコメントしました。
FRBのバランスシートの中身
FRBのバランスシートの中身の大半は、国債や住宅ローン抵当証券などです。2008年のリーマンショックの前は下のチャートに見られるようにFRBの総資産は1兆ドルを切っていました。
しかしリーマンショックで、クレジット・クランチ(金詰り)の状況が起きたので、政策金利を実質的に0%にするだけでは窮状を救うことが出来ないと判断したFRBは、積極的に市場から債券を買い上げることにしたのです。このオペのことを量的緩和政策、あるいはQEと呼びます。
市場から債券を買い上げるという行為は、その債券を保有していた投資家にキャッシュを渡すことになりますから、市中にキャッシュ、別の言い方をすれば流動性を供給することになります。
こうして市場から吸い上げ、FRBの金庫に在庫となっている証券類が4兆ドルを超える額になっているのです。
FRBはどうやってバランスシートの大きさを維持してきたか?
オペを始めたのは2008年ですから、その間、償還期限の短い債券は順次、償還を迎えています。その場合、債券の保有者にはキャッシュが戻ってきます。
つまりFRBがなにもしなければ、時間が経つにつれて償還を迎える債券が多くなるので、上のチャートに見られるFRBの総資産はじりじり減少するはずです。
現在、そうなっておらず、FRBの総資産が横ばいになっている理由は、キャッシュアウトされた分を、もう一度、新しい債券を買い直すことで再投資しているからです。
バランスシートを縮小する方法論
FRBのバランスシートを縮小する場合、まず考えられるそのやり方としては、この再投資をやめるということです。
問題はFRBがバランスシートを縮小する作業は、過去に経験が少ないので、市場にどのような影響が出るかわからない点にあります。
従ってその作業をするにあたっては、利上げを一旦ストップし、じっくり観察する必要があるのです。
現在、ほのめかされているプランとしては、まず既に市場にコミュニケートしてある通り、年内にあと2回の利上げを行い、それが済んだところで一旦、更なる利上げはお休みし、FRBはバランスシートの縮小に移るということです。
バランスシート縮小にまつわるリスク
2013年5月にバーナンキ議長が量的緩和政策のペースを減速するという、いわゆるテーパーリングを発表したときは、マーケットが急落しました。
したがって今回も若し市場が荒れるようなら、すぐにこのアイデアを引込めることが予想されます。