
著名投資家が「新興国買い!」コール
先日、ある投資カンファレンスに登壇した著名投資家ジェフリー・ガントラックが「新興国株式のバリュエーションは株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)などに照らして米国株式の半分に過ぎない!」として新興国に強気のスタンスを打ち出しました。
ガントラックの示した具体的なトレードの組み合わせは、1)S&P500指数をショートし、2)アイシェアーズMSCIエマージング・マーケッツETFを買うというものです。
新興国ETFが好調
ガントラックの指摘を待つまでもなく、このところ新興国に投資するETFのパフォーマンスは良いです。下は新興国ETFのごく一部をサンプルとして示しました。
なぜ新興国が人気化している?
それではなぜ新興国が今、人気化しているのでしょうか?
一般に新興国の株式市場は外人動向、とりわけ米国の投資家の動きに敏感です。これはどうしてかというと、新興国の多くは国内での金融資産の蓄積が遅れており、機関投資家の存在も影が薄いですし、マーケットの「厚み」に欠けているからです。このため自ずと外人の手口に振り回されることになります。
カギを握るのは米国の投資家ということになりますが、彼らの習性として米国連邦準備制度理事会(FRB)が利上げすると海外に投資していた資金を米国内に引き揚げ、逆に緩和局面では積極的に海外、とりわけ新興国へ投資することが知られています。
その理由は、国内の利子が良くなれば、何もリスクを冒して海外に投資しなくても有利な投資先が国内に見つけられると彼らは考えるからです。
加えて米国が利上げする局面では、ドル高になりやすいです。為替差損をこうむるのがイヤだという投資家は、ドル高になるとサッサと資金を米国に戻します。
アメリカは2015年12月から利上げ局面に入りました。つまり新興国にとってはアゲンストの風が吹いてきたわけです。その状況は、去年の11月にドナルド・トランプが大統領選挙で当選したことで、さらに悪くなったと投資家は認識しました。
なぜならトランプは中国やメキシコなどに対して高関税をかけると脅していましたし、「トランプ減税」で景気にテコ入れすることを公約していたからです。
しかし現実にはトランプが約束したそれらの事は起こっていません。最悪の事態を想定していた新興国株式の投資家は、ホッと胸をなでおろしています。
またFRBも「年内3回利上げすれば、そこで一旦、利上げの手を止め、こんどはFRBのバランスシートの圧縮に移って行きたい」ということをシグナルしています。つまり一部投資家が懸念したような急ピッチでの利上げは起こらない雲行きとなっているのです。
こうしたことからドルは軟調に推移しています。これは米国の投資家にとって新興国市場に参戦しやすい環境です。
新興国のファンダメンタルズ
さて、新興国のファンダメンタルズはどうでしょう?
新興国の企業の一株当たり利益(EPS)は、今年+25%前後で成長すると見込まれています。これに対して米国企業のEPS成長率は+9%前後と予想されます。つまり新興国の利益成長率の方が高いのです。
新興国の製造業購買担当者指数は、先進国に比べると悪かったです。
しかし最近になってようやく新興国のメーカーの購買担当者のマインドも上向いています。
新興国の多くは先進国との貿易に成長を依存しています。2015年以降低迷していた世界の貿易量の伸びは、いま再び力強くリバウンドしています。
これらのことから新興国人気はしばらく続くと考えられます。