
連邦公開市場委員会
6月14日、二日間に渡って開催されていた連邦公開市場委員会(FOMC)が閉会し、0.25%の利上げが発表されました。
これで米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートは1.25%になります。
FRBのバランスシートの圧縮
またFRBのバランスシートの縮小に関しては毎月米国財務省証券の在庫60億ドル、ならびに住宅抵当証券の在庫40億ドルの合計100億ドルを圧縮しはじめ、四半期ごとに圧縮額を増やし、最終的には米国財務省証券の場合毎月300億ドル、住宅抵当証券の場合毎月200億ドルの圧縮を行うことが発表されました。
その開始時期に関しては「今年のある時点から」という表現が使われましたが開始時期の明言は避けられました。
さらにイエレン議長の記者会見の中で「FRBのバランスシート圧縮作業はフェデラルファンズ・レートの調整とは別に、背後で粛々と行ってゆくつもりだ」と発言しました。
FRBがそのバランスシートの圧縮について討議していることが最初に一般に知らされたとき、一部のFRBメンバーが「バランスシートの圧縮に際しては、利上げの手を止めることを検討している」と発言したわけですが、今日の説明だと利上げとバランスシートの圧縮が同時進行で実施されるというニュアンスでした。
経済予想サマリー
さて、FOMC声明文に添付された経済予想サマリー(SEP)では大方の予想に反し、FOMC参加メンバーによる2017年末のフェデラルファンズ・レートのコンセンサスが1.4%と不変でした。市場は、この予想が(少し下がるのでは?)と見ていました。
このことは「まだあと一回、年内に利上げがあるかもしれない」ということをほのめかしています。
一方、PCEインフレの予想を見ると2017年末が1.6%に下がりました。
インフレに関し、活発な議論
このように足下のインフレ予想が下方修正されにもかからずFRBが引締めした理由としてイエレン議長は質疑応答の中で「携帯電話の毎月の使用料、ならびに処方薬の薬価が、かなり下がった。これは一時的な現象だと見ている」と答えました。
イエレン議長がこのように物価を構成する個々のアイテムについて言及するのはめずらしいことです。
携帯電話の使用料の下落は、近年、携帯電話会社がスマートフォン本体の価格を毎月の通話料と一緒に請求するのではなく、本体価格の割賦支払と通話料金をハッキリ分けたことで消費者にとってのコストが明確化し、それが価格下落圧力を生じたという側面があります。
処方薬の薬価が下がった理由は、一昨年から去年にかけて、毎年どんどん吊り上っている薬価に対し消費者や議会から激しい反発があり、製薬会社がしぶしぶ値引きに応じるということが相次いだことが関係しています。
いずれにせよFRBはこれらの価格下落は一過性のものであり、中長期を展望すると利上げを継続しなければいけないと考えているわけです。
トランプ政権の成長戦略の遅延について
それから質疑応答の中で記者団から「トランプ政権の成長戦略はモタモタして実現の可能性が遠のいているが、それを金利政策に反映させる必要があるのではないか?」という質問が出ました。
これに対しイエレン議長は「消費者ならびに事業主の信頼感指数にはあまり変化はない。また消費支出に悪影響が出ている様子も無い」としてその考えを退けました。
FRBは意外にタカ派だった
これらのことを総合すると、ここ数カ月の米国の経済指標にやや陰りが出ており(ひょっとするとFRBは利上げの手を緩めるのでは?)という観測が出ていたのが、見事に裏切られた格好になりました。
つまりFRBは、意外にタカ派だったのです。
14日のこの発表後、ドルが買われたのは、そのような理由によります。