悪い雇用統計で年内もう1回利上げの線は消えた?

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後退する利上げ観測

先週金曜日に発表された雇用統計が悪かったので、年内もう1回利上げの線が消えつつあります。FRBのバランスシート圧縮着手も、ひょっとすると年内はムリかもしれません。
これらのことが意味するところは、ドルは引き続き売りプレッシャーを受けるということです。

9・10月のカレンダー

910月は予定がぎっしり詰まっています。

まず9月の末までに米国議会は2018年度連邦予算を可決しなければいけません。
次に10月のある時点で連邦債務が上限に達してしまうので、その上限を引き上げる議決をする必要があります。

 ハリケーン・ハービーでテキサス州ヒューストンに大きな被害が出たので「天災の最中には共和党と民主党は対立の矛先を収め、一致団結するだろう」という楽観的観測が出ました。
先週、災害のニュースがあったにもかかわらず米国株が買われたのは、そのような理由によります。
しかし投資家のアテンション(注意力)は短いです。一か月後には、皆、ハリケーン・ハービーのことなど忘れていると思います。

つまりアメリカがデフォルトするリスクが再び取り沙汰される可能性は未だ残っているのです。
言い直すと、910月はボラティリティが高くなるというメイン・シナリオには変更が無いということです。

米国景気の減速は、株価下支え要因

さて、上に書いたことと矛盾するようですが、先週の雇用統計に表れていたような米国経済の減速は、実は株価にとって良い材料です。
なぜならば景気が弱いときは、長期金利は低い水準にとどまるからです。 

金利と株式は「競争関係」にあります。なぜなら無リスク証券の利回りの魅力が増えると、わざわざリスクを冒してまで株を買うという動機が減じるからです。
今回の雇用統計は「とうぶん金利は低いままだろう」というシナリオを補強するものでした。
またドルに関しても、どんどん強くなるような要素は少なくともファンダメンタルズからは、ありません。

 ドル安局面では米国の輸出企業の業績は伸びやすいです。したがってドル安は株高要因なのです。
つまり、現在アメリカが置かれた環境は1)比較的高い政治リスクならびにそれによるボラティリティの上昇と、2)低金利・ドル安から来るマーケット支援材料、の二つがきれいにバランスしているわけです。

雇用統計

8月の非農業部門雇用者数は予想を下回る15.6万人でした。

先月と先々月の数字も下方修正されました。

失業率は0.1%悪化し、4.4%でした。

平均時給は予想を下回る+3¢の上昇にとどまりました。

920日のFOMCでは、政策金利の変更も無いし、FRBのバランスシート圧縮の開始月に関するコメントも無いと思います。

つまり様子見に徹するということです。

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