米国の税制改革の後退はドル安要因 最も恩恵をこうむるのは新興国市場

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年内の税制改革は絶望的

ドナルド・トランプが大統領に就任したとき、抜本的な税制改革が行われるのではないか? という期待が盛り上がりました。
しかしレーバーデー明けのワシントンDCでは(年内の税制改革は絶望的だな)というあきらめが広がりつつあります。 

その理由として、懸案の連邦債務上限引き上げ法案に関し、トランプ大統領が突如、民主党案を支持する態度を表明したからです。
民主党案では、とりあえず連邦債務上限の引上げを三ヶ月延長し、12月に再審議することが提唱されています。 もちろん、大統領が民主党案を支持したからといって、それが成立するという保証はありません

しかし今回、トランプ大統領が同胞の共和党を差し置いて、突如、民主党と手を組んだことで、共和党幹部とトランプ大統領の関係は険悪になっています。 そのことは税制改革法案を円滑に進めてゆくのが、いっそう難しくなったことを意味します。

なぜ今年中に税制改革法案を可決した方がベターなのか?

12月にもう一度連邦債務上限の引上げに関しバトルをやらなくてはいけないということは、税制改革法案の審議開始は、たぶんその後になることを意味します。 これはタイミングとしては「遅きに失した」と言えると思います。 

なぜなら、来年は中間選挙の年に当るからです。

通常、中間選挙の年は、あまり込み入った法案は審議しにくいです。これはどうしてかというと、議員さんたちは選挙活動に気を取られやすいですし、投票の直前に有権者の心証を悪くするような意見は表明できないからです。
さらに言えば、中間選挙の結果、下院で共和党が過半数を失うリスクもあります。そうなれば税制改革の夢は完全に消えます。

税制改革の見通し暗転はマーケットにとって何を意味する?

税制改革の見通し暗転は、ドル安を招きます。
なぜなら米国経済はかれこれ8年間も拡大を続けており、だんだん息切れし始めているからです。 ここで税制改革が行われれば、経済に活を入れることが出来ます。その希望が、今、ほとんど消えかかっているのです。折から米国の10年債利回りはどんどん下がっています。これは景気が強い時の長期債の動きではありません。

 米国企業の第2四半期決算は、前年比+10%近く増益となり、絶好調でした。しかし株価の方は、いまひとつ反応薄でした。 このように「良い決算を出しても上がらない」事例は、最近では2007年に同様の現象が見られました。そしてそれはマーケット反落の前兆となりました。

米国のファンドマネージャーが考えている事

そこで米国のファンドマネージャーは、くたびれてきている米国株式市場から、資金の一部を海外に振り向け始めています。
とりわけ新興国株式は、ドル安、米金利安のときにパフォーマンスが良くなるという経験則があります。

実際、代表的な新興国ETFであるバンガードFTSEエマージング・マーケッツETF(ティッカーシンボル:VWO)は、きれいな逆三尊のボトムを形成しています。

新興国株式が選好される理由

ドル安に加えて、現在は新興国株式が選好される理由がいくつもあります。 

まずリーマンショック以降低迷していた世界の貿易が、だんだん復活してきていることが挙げられます。下は中国の輸出と輸入のチャート(前年比)ですが、明らかに改善しつつあります。

新興国の多くは輸出に依存する経済となっていることから、貿易の活発化はGDP成長の支援要因です。

 次に中国経済の内容改善も心強い要因です。中国では住宅バブルが弾けるのではないか? と懸念されてきましたが、2015年を境に、住宅在庫は減少に転じています。

さらに遅々として改革が捗っていなかった政府系企業の体質改善も、ようやく少し進捗した形跡があります。下は政府系企業の利益(前年比)のチャートです。

一方、ブラジルに目を転じると経済改革に意欲を燃やしているミシェル・ティメル大統領に汚職の疑惑が降りかかったのですが、どうやらそれは濡れ衣だったようで、今のところ議会はティメル大統領をしっかり支持しています。
その支持を背景にブラジルでは今後、年金制度の改革、国有資産の払い下げなど、野心的なプログラムが次々に実施される見込みになっています。

まとめ

米国の税制改革の夢は、どんどん遠ざかっています。そのことは目先、ドル安圧力がかかりやすいことを意味します。米国の機関投資家はドル安局面では資金を新興国へシフトします。折から新興国では様々な経済のファンダメンタルズ面での改善や政治環境の改善が見られています。

マネーハッチ   

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