
今週末、ドイツ連邦議会選挙が実施される
9月24日(日)、ドイツ連邦議会選挙が実施されます。ドイツ連邦議会(Bundestag)は米国の下院に相当します。ちなみに上院は連邦参議院とよばれます。
連邦議会は連邦参議院に優越しているため、実質的には連邦議会の一院制であると言っても過言ではありません。その意味では、今回の選挙はビッグ・イベントです。
しかし市場の、この選挙に対する注目度は高くありません。
その第一の理由は、市場参加者が(今回の選挙では、マーケットに影響を及ぼすようなサプライズは出ない)と考えているからです。私もサプライズは出にくいと思っています。
直近の有権者へのアンケートでは、メルケル首相の支持率は69%と高く、ドイツ国民は現状維持を望んでいます。
ドイツ国民が現状に満足している理由は、ドイツ経済が好調だからです。
一例として、下は失業率ですが、歴史的に低い水準となっています。
ドイツへの移民の流入は、ドイツ国民を心配させています。したがって移民問題が選挙の争点になることは間違いありません。
しかし去年、75万人を数えたドイツへの難民申請数は、今年はこれまでに僅か11万人に減っており、プレッシャーは明らかに和らいでいます。
また欧州連合(EU)のリーダー国として、多国籍、多元的な価値観を擁護する立場をドイツが打ち出さなければいけない事は、ドイツ国民もよく理解しています。
このことから「ドイツのための選択肢(AfD)」に代表される過激な政党が得票を伸ばすシナリオは考えにくいです。
連立政権の形成
今回の選挙で、ひきつづきメルケル首相の出身政党である「ドイツキリスト教民主同盟(CDU)」が第一党になることは、ほぼ確実です。CDUは現在、連邦議会の議席の40%を占めています。今回の選挙でも37%前後の議席を占めると予想されています。
現在、二番目に大きな政党は「ドイツ社会民主党(SPD)」で、31%の議席を占めています。SPDは、CDUとは連携せず、野党の立場を取っています。なおSPDは1875年に創設されたドイツ社会主義者労働者党を前身としており、たいへん由緒正しい政党です。つまりドイツのみならず世界の社会主義運動の先駆的な政党だったということです。
しかしSPDは現実主義的な考え方をすることで知られており、その立場は、どんどん穏健派に傾いています。従って、現在では「慎重で保守的な考え方をする政党」という評価になっています。その関係で、もし今回の選挙でSPDが大躍進したとしても、EUの中におけるドイツの方向性には大きな変化は出ないと思います。
現在の第三党は「キリスト教社会同盟(CSU)」です。現在の議席シェアは9%です。CSUはCDUと連立政権を形成するパートナーになっています。
さて、今回の選挙の結果次第ではCDUが連立政権樹立を模索する際の連携パートナーは変わってくると思います。実際、色々な組み合わせの可能性が取り沙汰されています。
いずれにせよ投資家が理解すべきことは、どんな組み合わせになってもドイツの基本路線には今後も変更は無いということです。