米国の税制改革法案の進捗状況について

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下院が税制改革法案を可決

今年のマーケットの焦点のひとつは共和党が提唱した税制改革法案です。当初、ムニューシン財務長官は「8月までに成立させる」と意気込んでいましたが、これを書いている1120日の段階では、まだ成立していません。 

しかし、1116日に重要なステップをクリアしました。それは下院が下院税制改革法案を可決したことです。
なお、上院はこれとは別に上院案を現在審議中です。

立法プロセス

今回下院を通過した下院税制改革法案は、次に上院に回され票決にかけられます。
ただ、下院案そのままでは上院で可決できないリスクもあります。

そこで上院が下院税制改革法案を可決しやすくするために、それに手を加えたなら、それが上院で可決された後、もう一度その改変された法案を下院に戻し、下院がこれを可決する必要があります。
両院で可決されたあとで、その法案は大統領に回され、大統領が署名して、はじめて法案成立ということになります。

 なお、別に動いている上院案もいま説明したのと同じプロセスを経て両院で可決されることが必要になります。 つまり、現在は競合する二つの法案が審議されており、未だ最終的にどちらが勝つかわからないし、両方とも頓挫する可能性もあるのです。

 また今回下院を通過した下院税制改革法案は、今後改変を加えられることは避けられないと思われますので、最終的にこれが成立した際の中身は、現在のそれとは大幅にかけ離れているかも知れないのです。

 このように未だ大きな不確実性を残している税制改革法案ですが、いま下院から上院に回されている法案を見れば今回の税制改革がどのくらい米国経済を押し上げるか?おおよその見当は付きます。

タックス・ポリシー・センターの試算

先日、1116日に下院を通過した下院税制改革法案をベースに、それが米国経済にとりどれだけ景気浮揚効果があるかの試算をタックス・ポリシー・センターが発表しました。

 タックス・ポリシー・センターというのは、シンクタンクのアーバン・インスティチュートとブルッキングス研究所が共同で運営しているリサーチ機関です。

結論から言えば、タックス・ポリシー・センターは下院税制改革法案のGDP押し上げ効果を下のチャートのように試算しています。

2018年のGDP0.6%押し上げられ、2.5%成長すると見ているわけです。
しかし、その後、減税効果はだんだん薄れてくると試算されています。 

トランプが大統領になった時は大型減税に対する期待が強かったので「税制改革が実現すればGDP成長率で3%は固い」という意見が多かったです。しかしその夢は遠のいています。

2018年にGDP0.6%押し上げられることによる政府の増収は1690億ドルになるとタックス・ポリシー・センターは試算しています。しかしこの経済成長をひねり出すために、向こう10年間で1.4兆ドルにのぼる減税を行うわけですから、差し引きでは政府は「持ち出し」になります。

 このため、連邦債務はGDP押し上げによる増収効果分を加味しても、向こう10年間で1.5兆ドル増えてしまうのだそうです。なお、この計算には債券が売られることにより金利コストが上昇することも勘案されています。

議会がクリスマス休暇に入るまで、ほぼ一ヶ月を切っているわけですが、年内に法案成立が実現するかどうかは予断を許しません。
ただ、ウォールストリート・ジャーナルは、前回税制改革法案が成立した30年前と比べると今回の方がスピーディーに審議が進む可能性があることを指摘しています。

 その理由は、30年前は紙と鉛筆、議会のロビーに据え付けられた公衆電話などを通じて法案の修正、摺り合わせが行われていたのに対し、現在はコンピュータやチャットなどを駆使して情報がたちどころに流れるからです。

 つまり、年内成立の希望が消えたわけではないということです。