
FOMCの結果について
12月12・13日の両日に渡って開催されていた連邦公開市場委員会(FOMC)が閉幕し、大方の予想通り米国の政策金利であるフェデラルファンズ・レートは0.25%引き上げられ、1.5%になりました。
今回のFOMCでは経済予想サマリー(SEP)が公表されました。
まず今後のフェデラルファンズ・レートに関するFOMC参加メンバーのコンセンサス予想には殆ど動きはありませんでした。
次にGDP予想は税制改革法案が成立することを念頭に置き、少し引き上げられました。
同様に失業率も景気が強くなる分だけ、更に低くなるという予想になっています。
しかし来年以降のPCEインフレ予想には全く変化はありませんでした。
同じくPCEコア・インフレ予想にも変化はありませんでした。
まとめると、景気は一層強くなることが予想されるけれどインフレ見通しには変化は無いので政策金利の予想も変更する必要はないとFOMC参加メンバーが感じている事が読み取れます。
なお今回の政策金利の決定にはシカゴ連銀のチャールズ・エヴァンス、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリの二名が利上げ反対の意見を表明しました。二名が反対票を投じるのはやや異例と言えますが、これは景気が概ね強いにもかかわらずインフレが低いので、利上げは慎重に行った方が良いというFOMCメンバーたちの懸念を代弁した反対票と言えそうです。
イエレン議長の記者会見では長短金利差が小さいことに対する質問が出ました。
これに対するイエレン議長の回答はターム・プレミアム(=インフレに対する市場の見方)は現在、限りなくゼロに近いし、FRBが慌てて利上げしないことを市場参加者が十分に織り込んでいるので長期金利の水準は低く、結果としてイールドカーブは普通よりフラット気味になっているけれど、これは市場参加者が近く景気失速すると考えているからではないというものでした。
マーケットへの影響
FOMCの結果が発表されると長期債は買われ、ドルは売られました。今回の経済予想サマリーから読み取れることは、なるほど税制改革で景気は一時的に少し強くなるけれど、その景気浮揚効果は一過性のものであり、構造的な低インフレを根本から変えるようなインパクトは持たないということです。だからFRBはこれまでの基本方針を堅持すれば良いという解釈になります。
市場参加者の中には税制改革で米国経済が一層強くなると利上げのペースを速める必要があるのではないか?と予想する向きもあったので、「進路に変更なし」のシグナルが出たことでドル売りが出ました。
なぜインフレが低いままで推移しているのか?についてはFRBも説明しあぐねています。そのことは税制改革による一時的な景気浮揚効果が剥げると再びインフレが低すぎる状況に逆戻りするリスクがあることを示唆しています。つまりリスクは明らかにダウンサイドの方が大きいです。したがってドルには今後も下落圧力が働くと思います。