株取引の税金について考える 3年間繰り越せる損益通算とは?

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(写真=PIXTA)

「株などの損失が節税につながる」ということをご存じでしょうか。「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」という制度の活用です。「税金は難しいのでよくわからない」という人も多いと思いますが、投資は税も含めてトータルで利益を考えるものです。

 

損益通算、繰越控除とは?

投資は利益を出すことを目的にしているので、損失については考えたくないと思う方が多いかもしれませんが、この損失を有効活用する方法があります。それが「損益通算」と「繰越控除」です。

損益通算とは、文字通り損失と利益を通算(相殺)することで利益を圧縮するというものです。

たとえば、ETF投資で20万円の利益が出た場合、その金額の20.315%の課税が発生し、20万円×20.315%=約4万円も税金を支払うことになります。しかしこのとき、もしもREIT取引で10万円の損失が出ていれば、先の20万円の利益からこの10万円の損失を差し引き、課税対象額を10万円とすることができます。そうすると、納税額は10万円×20.315%=約2万円で済むことになり、2万円もの節税になるわけです。

この損益通算は同一年度内で行われますが、損益通算しても控除しきれない損失がある場合には翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することが認められています。これを「繰越控除」といいます。

 

2016年から損益通算の範囲が拡大

損益通算できる対象は、これまで、(1)上場株式、(2)公募株式投資信託、(3)ETF、(4)REITなどでしたが、2016年の取引からは「特定公社債など」も損益通算の対象に加わりました。

特定公社債とは、国債、地方債、外国国債、外国地方債、公募公社債、上場公社債などを指します。比較的安全とされる債券ですが、外債などは為替リスクがあるため損失が膨らむこともあります。そんなとき、株式の利益と損益通算することができれば、納めるべき税金を減らすことができるようになります。これは大きなメリットといえるでしょう。

 

確定申告が必要

同じ証券会社で株式取引と投資信託取引を行っているような場合には、証券会社において損益通算処理が行われるので、確定申告は必要ありません。しかし、別々の証券会社で行っている取引を損益通算するには確定申告をしなければいけません。また、単独の証券会社で取引を行っていても譲渡損失を繰り越すことはできないので、その場合には確定申告が必要になります。

確定申告は、会社員の方にはあまりなじみがないと思いますが、国税庁のホームページには「e-Tax」というオンラインサービスがあり、必要事項を入力すると自動的に確定申告の書類を作成したり、そのまま申請したりすることが可能です。これを利用すればそれほど難しいものではありません。

なお、損益通算・繰越控除を受けるためには毎年確定申告する必要がありますが、会社員のように確定申告の義務がなくこれまで申告していなかったような人の場合、期限後5年間は「還付申告」をすることができます。

一方、すでに確定申告書を提出してしまっている場合で、損益通算・繰越控除を適用していなかった場合には、還付申告ではなく、「更正の請求」を行って税額の減額を求める必要があります。ただし、そうしたケースでも、期限後の申告が認められないことがあります。それは、特定口座で「源泉徴収あり」を選択している場合です。手続きが簡便なこともあり、「源泉徴収ありの特定口座」を選択している人も多いと思いますが、確定申告書を提出する場合には注意が必要です。

 

 

NISA口座との関係

最後にNISA口座と特定口座との関係について説明しておきます。

NISA口座は、少額投資非課税制度を利用するための口座で、そこで生じた利益については非課税になるというものです。NISA口座での取引は利益が非課税になるので、NISA口座内で損失が生じたとしても損益通算する意味がありません。

では、同じ証券会社の特定口座との間で損益通算できるかというと、特定口座とNISA口座は完全に分離されており、両者の間での損益通算は認められていません。その点は注意して口座の振り分けを考える必要があります。

 

まとめ

損益通算と繰越控除の制度をうまく活用することで節税が可能です。また、損益通算の対象が拡大されたことは大きなメリットとなるでしょう。これを機に、税金について今一度考えてみてはいかがでしょうか。