VIX(恐怖指数)とETF その2

前回 VIX(恐怖指数)とETF

 

(前回記事リンク)

 

通称で恐怖指数と言われるVIXですが、これをETFで取引(トレード)できないか?・・・というお話の続きになります。

 

VIX指数はETFで取引できる?

東京証券取引所に上場されている200を超えるETF銘柄の中で『VIX』と付いているものをピックアップしてみると、(他にもありますが)主なものとして下記2銘柄が見つかります。

 

○ 1552 国際のETF VIX短期先物指数

○ 2049 NEXT NOTES S&P500 VIX インバースETN

 

それではまず、【1552 国際のETF VIX短期先物指数】から見てみましょう。

本家VIX指数をトレードしたいわけですから、VIX指数と連動していないといけませんよね。まず初めに、前回も示した本家VIXの1年分の日足チャートを見てみます。(チャートの出典:Chart Park,TradingView

 

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ふむふむ、通常時は10~20辺りをウロウロしていて、「**ショック」みたいなのが来ると上に噴き上がってますね。

 

では、次に【1552 国際のETF VIX短期先物指数】(以下:1552ETF)の1年分の日足を見てみましょう。(チャートの出典:Kabutan)

 

1552%e6%97%a5%e8%b6%b3

・・・? れれれ? あれれ?何だか様子が違いますね。

 

それでは続けて、今度は6年分の週足も見てみましょう。

 

最初に本家VIXです(チャートの出典:Chart Park,TradingView

 

vix%e6%97%a5%e8%b6%b3

 

ふむふむ、理解できますね。

 

次に1552ETFです(チャートの出典:Kabutan)

 

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あらまあ、もう何だか全く違うチャートになっていますね。

 

1552 国際のETF VIX短期先物指数はVIX指数とは別物

結論から言って、ご覧の通り、『本家VIX指数 と 1552ETF』は別物と言ってしまってよいでしょう。これまた結論ですが、本家VIX指数のトレードには使えないと言ってよいでしょう。

もちろん設定会社は「長期で持たないで、短期で使ってください」とは言っています。そうは言ったって「どうなんだ?」というのが一般の感覚かと思います。

実際にこの1552ETFについては、いくつかの大手証券会社の解説を見ると、

VIX指数をご存じでしょうか?通称、恐怖指数と言われていて・・・(何とか、かんとか)・・・このように1552ETFをリスク回避に使うことができます。」

・・・という解説が多く見受けられます。やはり名称にVIXと付いていますからねえ。無理もない。

では、詳細を確認せずにVIX完全連動だと思って購入したユーザーが悪いのか?(上に書いたように大手もよく理解していないようですが)

 

ですが、この銘柄の上場初日のですね、設定会社の社長の言葉を見ると・・

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刺激的な言葉が並んでいますね、まさか何年後かに蟻地獄に近いようなチャートを描くとは思っていない様子が伺えます。

ちなみに【1552 国際のETF VIX短期先物指数】の基準価額はこんな感じです(公式ページより)

 

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しかし、この1552ETFは何故こんな風になってしまったのでしょうか?

VIXと名前に入っているのにも関わらず・・・です。

 

なぜETFでこんな事が起きるのか

ここで、公式ページのリンクを貼っておきます。

1552ETFの公式ページはこちら

http://www.am.mufg.jp/fund/160001.html

目論見書はこちら

http://www.am.mufg.jp/pdf/koumokuromi/160001/160001_20160810.pdf

目論見書を読んで噛み砕くと、こう書いてあります。

S&P 500 VIX短期先物指数、の変動率に一致させることを目指して運用を行います。ただし円換算で」

 

・・・ということです。

今までの流れと、ここで分かることは「どうやら、VIXVIX短期先物指数は別物なのではないか?」という疑問と「円換算」だということです。

そうか! 円換算だから、ドル円レートの影響が出ているのか!・・と一瞬思ったりもしますが、それを考慮に入れても、あの右肩下がりはおかしいですよね。

とりあえず「円換算」という要素を抜きにして、この1552ETFの大元(原資産という)になっている『VIX短期先物指数』とやらの値動きを見てみましょう。

 

原資産の値動き

こちらが本家S&P500の『VIX短期先物指数』の約5年分のチャート

(チャートの出典:S&P500 Dow Jones Indices)

 

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ありゃりゃ、大元(原資産)自体がもう右肩下がりなんですね。そりゃ1152ETFがこんな体たらくになってしまうのも納得がいきます。

ただね、『VIX短期先物指数』を擁護するわけではないのですが、10年分のチャートを見ると

また景色が違うのですよ。(チャートの出典:S&P500 Dow Jones Indices)

 

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これを見ると、少なくともリーマン・ショックを挟む20082011年頃までは、「それなりには」恐怖指数としての役割を果たしていたように見えます。購入者にとっては蟻地獄にハマってしまったかのようなチャートはその後ですね。

 

ここで何かに気づきませんか?

 

そうです、1552ETFが東証で設定されたのは20101215日ですので、この時点では『VIX短期先物指数』が正常に機能しているように見えたはずです。VIXと絶対数値こそ違いますが、恐怖を表すという意味では機能していたように思います。そうであればもちろんトレードにも活用できます。

つまり、1552ETFが設定された時期を考えると、上記の大手証券の説明も(その時点では)間違ってはいないし、上記社長の発言も理解ができるわけです。

ここ56年あまりの蟻地獄チャートの原因の一端は、本家S&P500の『VIX短期先物指数』の説明から垣間見ることができます(出典:S&P500 Dow Jones Indices)

 

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毎日次限月にロールオーバー(限月乗り換え)をしているわけですね。

 

ロールオーバーという落とし穴

ロールオーバーというのは225先物などをトレードする我々には馴染み深いわけですが、『VIX短期先物指数』も「先物」と付いていますのでロールオーバーを行っているようです。名前に「先物」と付く銘柄には必ず期限がありますので、期限が切れないように常に乗り換えていく必要があります。 

ロールオーバーというのはイメージしずらいかもしれませんが、FXや株や225先物などで言うところのスプレッド(売値と買値の差)のコストに近いものと考えてください(厳密には違いますが)。

しかもロールオーバーというのは、スプレッドよりもコスト(価格差)がかなり大きいのが普通です。ですので、このETFに限らずロールオーバーというのはただでさえファンドの資産を食いつぶしがちなものです。上記説明を読むと、それを毎日行っているようです。

 

それでは何故、20082011年頃までは問題なかったのに、その後は蟻地獄チャートになっているのか?

それは正直わかりません、以下は想像ですが、やはりロールオーバーにかかるコストですね。絶対数値が大きかった頃は問題なかったと思われますが、平穏相場が想定よりも続いてしまったのが理由かもしれません。想定よりもひとたび絶対数値が小さくなりはじめると、相対的にこのコストが重たくのしかかります。

225先物に例えれば日経平均が20,000円でも、7,000円であっても、ロールオーバーのコストはほぼ変わりません。

ましてや1552ETFの場合は、2009年当時は10,000円~15,000円をつけていたわけです。

ロールオーバーのコストが(仮に)10円とした場合、当時なら基準価格の0.1%程度ですが、現在の138円であればロールオーバーのコストは基準価格の7%にもなります。(さすがに7%は現実感がありませんが、これは例えとなります)

 

値動き(上昇)の場合も同様です。10,000円の基準価格が30%急騰で3,000円上がりますが、200円の基準価格が30%急騰しても60円です。 

リーマン・ショックが起きた後も、ご存じのようにギリシャ危機や中国危機がありましたが、その時には既に『VIX短期先物指数』の絶対数値が(重なるロールオーバーコストで)既に小さくなってきており、30%~50%急騰したところで・・・・ということかもしれません。

言い方を変えるならば、この銘柄の商品設計は、もう少し頻繁に危機が発生してS&P500が何度も下落することが前提になっていたのかもしれません。そうすると本家VIXのボラティリティが上がり、この銘柄の絶対数値も高値を維持できたのかもしれません。

しかし実際には、S&P500が恐怖で乱高下するよりは、FRBの量的緩和によりジワジワ押し上げられる展開となったことも、この銘柄には想定外だったのかもしれません。

 

それから、当時と比べて現在はリスク回避の銘柄や手法の多様化が進み、無理して『VIX短期先物指数』を使う必要性が薄れていることもあるかもしれません。(この場合は悪循環)

現在の蟻地獄のようなチャートは『VIX短期先物指数』の設計者も想定外なのではないか・・・と思っています。

 

ちなみに1152ETFの直近六期の決算内容(公式ページより)

 

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ここまでのまとめ:

  • 1552 国際のETF VIX短期先物指数】は、残念ながらVIX(恐怖指数)のトレードとしては相応しくないと言わざるおえない。
  • この銘柄の上場当初はそれなりに機能したかもしれないが、現在では正直オススメできません

 

 オススメできないというのは、VIX指数の代わりとしてのトレードの話であり、右肩下がりという特性が継続されるのであれば、また別のトレード方法があるかもしれません。 

 

その他の銘柄はないの? 

ちなみに、実はこの『VIX短期先物指数』を大元(原資産)にしていたETF(ETN)は他にもありました。

 

【2030 ETN iPath VIX短期先物指数連動受益証券】などです。

 

「ありました」・・・ということで、これは昨年(2016年)の8月付けで整理銘柄に指定されて廃止されました。

この銘柄の値動きですが、どんな感じだったと思いますか?

そうです、ご想像の通りです! 基本右肩下がりで、上場直後の201110月には2,470円あまりをつけていましたが、上場廃止最終日の9月の価格は31円となっています。

 

1552ETFの未来や如何に・・・・・

それから文頭でありました、もうひとつのVIXと付く銘柄

 

○ 2049 NEXT NOTES S&P500 VIX インバースETN

 

に関してですが、これも大元(原資産)が同様に『VIX短期先物指数』ですので、本家VIXのトレードには不向きです。

ん?でも、インバース(逆)ですよね、1552ETFが右肩下がりなら、買ってるだけで上がるのでは?・・・と一瞬思ってしまいますが、ことはそう簡単ではないようです。

インバースでの上昇(↑)、ロールオーバーのコスト(↓)、それからインバースならでは減価(↓)の問題も絡んできて正直複雑です。

ここで詳しくは説明いたしませんが、初心者の方には難しい銘柄だと思います。興味のある方は調べてみると面白いと思います。

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