ETFとは?初心者講座

貯蓄から投資へという言葉を耳にする機会も増え、NISA(少額投資非課税制度)により資産運用が身近なものになってきました。そろそろ投資デビューしようかと考える人も多くなっていることでしょう。そんな投資初心者におすすめの金融商品がETF(上場投資信託)です。投資信託は聞いたことがあってもETFって何?と思う人も多いかもしれませんが、かの有名な投資の神様ウォーレン・バフェットが妻へ遺産の運用手段として遺言するほどの、実はとても優れた金融商品なのです。その理由を、ハイリスク金融商品とともに20年過ごしてきた現役証券マンが、どこよりも分かりやすくご紹介します。

1.ETFとはどんな金融商品なの?

ETFとはExchange Traded Fundの略で上場投資信託と呼ばれ、証券取引所に上場されいつでも売買ができる投資信託のことです。投資対象が幅広く、株式や債券などの主要な指数をはじめ金や原油などのコモディティまで日本国内のみならず世界中の多彩な資産に投資することができる優れた金融商品なのです。

1-1.ETFは指数連動型の投資信託

今でこそ銀行の窓口で購入できるほど一般的になった投資信託ですが、投資信託は複数の投資家がお金を出し合い、それを投資のプロであるファンドマネージャーが投資家に代わって運用を行う金融商品です。ETFはそうした投資信託の中で日経225やS&P500など市場を代表する株価指数など、特定の指標に連動するように作られたインデックスファンドです。

一般の投資信託との違い

「証券取引所で株と同じように売買ができる」という点です。投資信託は、○○ショックなどのように今日マーケットに何か一大事が起きてもすぐに売ることができません。でもETFは取引時間中であれば、流動性などの影響はあるもののいつでも売買ができるのです。

バフェットが妻へ信託した金融商品

投資の神様として名高いウォーレン・バフェットは、彼の妻へ自分の遺産の運用方法を次のように指示したのは有名な話です。

現金の10%を政府短期債で、残り90%はS&P500のインデックスファンドで運用するよう指示しました(私はバンガード社のを勧めます)。

My advice to the trustee could not be more simple: Put 10% of the cash in short-term government bonds and 90% in a very low-cost S&P500 index fund. (I suggest Vanguard’s.) (出所:BERKSHIRE HATHAWAY INC.

SHAREHOLDER LETTERS 2013)

1-2.投資対象が豊富

投資対象は株や債券のほか、金や原油といったコモディティなど多彩な資産クラスがあり、さらに世界全体や先進国、新興国などの地域、あるいは国や業種別など様々な選択肢があります。

1つのETFで分散効果を得られる

例えば、新興国の株式に連動するETFを買えば、それ1つで複数の新興国へ分散投資したのと同じ効果を得ることができという優れものなのです。自分で個別に買うなんてさすがにできる人は少ないでしょう。でもETFならば、あらかじめ複数銘柄が一つになっているので、初心者でも購入しやすくできているのです。

1-3.世界で急成長、プロが注目するETF

ETFはその利便性の高さから、10年間で純資産残高が7倍に急成長しています。直近で約300兆円、2020年には500兆円を超えるという見通しもあります。

ETF市場が急拡大した理由

このようにETF市場が急拡大している理由は、世界の銀行や保険会社といった機関投資家が積極的にETFを利用し始めていることがあげられます。また、米国最大の公的年金基金のカルパース(米国カリフォルニア州職員退職年金基金)など世界的に有名な年金基金がETFを運用に取り入れていることは有名な話です。日本でも日銀が金融緩和策の一環としてETFを購入していることをニュースで聞いたことがある方も多いでしょう。このように、投資のプロたちからも支持されているのがETFなのです。

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2.ETFが最近人気の5つの理由

世界で急成長しているETFですが、実は日本ではまだそれほど普及しているとは言えません。その理由の一つに、一般の投資信託に比べコストが安いつまり取扱う会社の得られる手数料が少ないため積極的に販売してこなかったことが考えられます。しかし、ネット取引の拡大、NISA口座のスタートなどにより徐々にその商品性、利便性が知られるようになり、近年人気が高まりつつあります。ハイリスク商品を20年以上取扱ってきた私から見ても、ETFほど投資家の立場に立って作られている金融商品に出会ったことはありません。

2-1.初心者にも分かりやすい

一般の投資信託はファンド名だけ見てもどんな銘柄に投資しているのかイメージしにくいものが多くありますが、ETFは国内外の代表的な株価指数をベンチマークとするため投資対象が一目瞭然です。構成銘柄や構成比率なども一般の投資信託が四半期ごとの開示が多いのに対してETFでは毎日公表されており透明性が高いことも安心できる理由です。

2-2.そもそもETFは上昇を目指して作られる

市場主義経済において経済活動は国、地域、企業の成長を目的に行われており、その経済活動の表れである株価も本質的に上昇することを目的としています。ETFのベンチマークとされる株価指数はその市場を代表する企業で構成されており、最低でも1年に1度構成銘柄の見直しが行われます。つまり、長期的に右肩上がりのカーブを描くことを目指して作られている金融商品なのです。実際の価格は当然変動しますが、せっかく投資するならこういった金融商品に投資したいですよね。

2-3.誰でも手軽に分散投資できる

長期に渡り高値更新を繰り返している米国株。アップルやマイクロソフト、P&Gなど有名企業は聞いたことはあっても、いざ投資しようと思った時にはどの銘柄に投資すればよいのか簡単には判断できませんよね。でも米国を代表する企業で構成されているS&P500に投資すれば、そうした有名企業や成長企業を含む500社の高収益企業に分散投資することができるのです。しかも、1口あたり投資額は、銘柄によっては1万円前後から数万円と少額で投資できますので、初心者にも始めやすくなっています。

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2-4.保有コストが安く長期保有に向いている

ETFには売買コストと保有コストの2種類のコストがかかります。

売買コスト

つまり売買手数料は、証券会社によって異なりますが株式の売買手数料と同じとなります(海外ETFの場合には、外国株にかかる売買手数料と同じ)。頻繁な売買(トレード)を考える場合に売買コストは気になりますよね。でもETFではレバレッジ銘柄を除いて頻繁な売買を想定する金融商品ではないので、実際のところはそれほど気にならないかもしれません。

保有コスト

信託報酬と呼ばれますが、ETFはこれが一般の投資信託のおおむね半分以下と安く設定されています。このコストは運用資産から一定比率で差し引かれるため、1年や2年では運用成績への影響に気付かないでしょうが、長期になればなるほどその影響は顕著になってきます。

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2-5.分配金をもらえる

ETFでは、株式の配当にあたる分配金を貰えます。分配金の額や頻度は銘柄によって異なりますが、日本の証券取引所に上場されているものでは年1~2回、海外の証券取引所に上場されているものだと年2~4回(半期または四半期)という銘柄が多くなっています。また、海外の債券ETFの中には、毎月分配で実績が年5%を超えるような高配当銘柄もあります。

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3.ETFで知っておくべき3つのリスク

そもそもETFは他の金融商品と比べて様々なリスクが低いことが特徴ですが、そうは言っても価格が変動する金融商品です。元本保証されているわけではないので、実際に投資する前にこれだけは知っておいて欲しいリスクを確認しておきましょう。

3-1.価格変動リスク

金融商品である以上、ETFにもリスクはあります。個別株と異なり複数銘柄に分散されたものに投資しているので、価格変動リスクは大幅に緩和されていますが、それでもリーマンショックなどの未曾有の経済危機などの際には大きく下落することはあり得ます。下の図はS&P500ETFの2008年リーマンショック前からの価格推移です。リーマンショック前の価格が120ドル台でしたが、リーマンショックを境に70ドル前後まで下落しました。下落率で約40%。その後長期で回復しているとはいえ、一時的にこうした価格変動リスクがあることは認識しておきましょう。

3-2.個別企業の倒産リスク

株式を原資産とするETFにも個別企業の倒産というリスクは当然ありますが、そもそも複数銘柄に分散投資されているので、1企業の倒産影響は非常に小さいものでしょう。また、ベンチマークとなる指数によって頻度は異なりますが、最低でも1年に1回、構成銘柄、比率等の見直しが行われるため、業績が落ちている企業は業績の良い企業に入れ替えが行われるため、それほど神経質になる必要はありません。

3-3.流動性リスク

流動性リスクとは、市場で取引量が少ないためにすぐに売買できなかったり、希望の価格で売買できなかったりする可能性のことを言います。これには大きく分けて、そもそも商品自体に市場性がない(=取引が少ない)場合と、○○ショックなど異常事態による場合とがあります。ETFは取引所で売買ができるので、一般の投資信託に比べ流動性が高いと言えます。

ETFを選ぶ際の注意点

ETF銘柄を選ぶときには、やはり純資産額が大きい銘柄や、日常から取引高の多い銘柄を選ぶ方が安心できるでしょう。取引高が少ないイコール人気のない銘柄の場合上場廃止(解約)となる可能性もありますので、選ぶ際にはご注意ください。個別銘柄の詳しい情報はモーニングスターのサイトなどでご確認いただけます。

4.ETFで国際分散投資をはじめよう!

ETFの醍醐味は、何といっても日本にいながら世界中のマーケットに投資することができるのです。しかも、テーマごとに組み合わせた指数になっているので選ぶのもカンタン。方法は2つ。国内に上場されているETFに投資するか、海外に上場されているETFに投資するかです。国内ETFは証券口座があればすぐに投資することができますが、海外ETFは外国株用の口座を開設する必要があります。

国際分散投資に海外ETFは外せない選択肢

例えば、金ETFでは世界最大のSPDRゴールドシェアは国内、海外ともに上場されていますので、特に外国株用の口座は必要ありませんが、日本に上場されているETFはおよそ200本と、米国の約1,800本に比較して選択肢が大幅に限られます。また米国には米国籍の企業だけではなく、アリババのような中国企業をはじめ世界の優良企業が上場していますので、国際分散投資を考えるときに海外ETF特に米国に上場しているETFは外せない選択肢です。手数料等は国内ETFに比べると一般的に割高になるので、短期のトレードではなく長期保有が基本戦略になるでしょう。

<米国のETF発行本数・純資産残高>

<国内ETFと海外ETFの比較>

4-1.これ1つで分散投資できる高いパフォーマンス銘柄

下のチャートは、海外ETFの「S&P500ETF(SPY)」「iシェアーズMSCI ACWI ETF(ACWI)」「バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)」と「日経225」の過去10年間の値動きを表しています。緑色の「日経225」と比べると海外ETFのパフォーマンスが高いことは一目瞭然です。

  • S&P500ETF(SPY):文字通りこれ一つで米国を代表する500銘柄に分散投資できる銘柄です。
  • iシェアーズMSCI ACWI ETF(ACWI):新興国46ヶ国を含む2,464銘柄に分散投資されグローバル株式市場の85%をカバーしています。
  • バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT):世界全体の98%の株式銘柄に投資ができるダイナミックなETFです。

5.まとめ

ETFとはどのような金融商品なのかご理解いただけましたでしょうか。今世紀最大の金融商品との呼び声高いETFですが、これまでは販売会社の実入りが少ないこともあり日本では一部の方の利用に留まっていました。しかし、これほど投資家サイドに立って設計された金融商品は見たことがありません。特に、これから資産を形成していこうと考えている人には、まずはぜひETFから始めてみていただければと思います。