原油ETFに投資する3つのメリットと注意点

つい数年前には100ドルを超えた原油価格。ガソリン価格もレギュラーで1リットル150円や160円をつけていたことは車を運転する方には記憶に新しいのではないでしょうか。その後、米国のシェールガス革命、中東産油国の増産、中国景気の減速などにより、昨年2016年には一時30ドルを大きく割り込みました。これにはさすがにサウジアラビアをはじめとするOPEC諸国が耐えきれず、昨年末には減産合意が成立し50ドルを回復。
エキサイティングな値動きが魅力の原油投資で真っ先に思い浮かぶのは先物取引かもしれませんが、実は先物のような大きなリスクをとらずに賢く原油に投資する方法、それがETFです。原油価格がこれから上がりそうだと思うけど、大きなリスクは取りたくないという方におすすめの金融商品です。

ETFで原油に投資する3つのメリット

ETFとは取引所に上場されて取引時間中いつでも売買できる投資信託です。もともと投資信託は1日1回しか売り買いできませんが、ETFは株と同じく自由に売買ができるのです。そのETFで原油に投資するメリットが3つあります。

  1. 原油への直接投資と同じ効果
  2. 少額から投資できる
  3. 低コストで運用できる

原油への直接投資と同じ効果

世界の原油価格のベンチマークは米国のWTI原油先物価格です。原油価格とは一般的にこれを指します。日本からこのWTI原油先物に直接投資する方法はありませんが、WTI原油価格をベンチマークとしている指数に連動するETFなら直接投資するのと同じ効果を得られます。指標となる原油先物取引には限月といって取引の期限がありますが、ETFには取引の期限もありませんので中長期の保有も可能です。

少額から投資できる

少額から投資できることがETFの大きな特徴ですが、その中でも原油ETFは5,000円以下から投資できます。個別株の売買と同様現物取引なので、購入価格との差額がそのまま損益になります。少額から投資できるといってもレバレッジを効かせた証拠金取引ではないので、投資した金額を超える損失が発生することはありません。

低コストで運用できる

短期売買にせよ長期投資にせよ取引に係るコストが低いことはとても重要なポイントです。ETFは個別株の売買と同様、購入時と売却時に売買手数料がかかりますが、元々低めに設定されているネット証券ならば一般的な投資信託の販売手数料よりも割安になります。また、ETFは信託報酬が投資信託よりも非常に低い設定となっていますので、中長期の投資にも向いています。

原油に投資できるETF

証券会社によって取扱商品は異なりますが、原油に投資できる代表的なETFをご紹介します。

国内ETF

日本国内に上場されている代表的な3銘柄です。

WTI原油価格連動型上場投信(証券コード:1671)

WTI原油先物をベンチマークとしており、純資産約450億円と国内原油ETFでは最大規模の銘柄です。他の原油ETFに比べると信託報酬0.85%(税抜)と原油ETFの中では高いため、コスト面では長期保有には不向きです。1口2,500円前後(※)で購入できます。

NOMURA原油インデックス連動型上場投資(証券コード:1699)

野村証券金融工学研究センターが算出しているNOMURA原油インデックスをベンチマークとしていますが、実質的にはWTI原油先物に連動するETFです。純資産は現在約360億円と国内2番手ですが、出来高はもっとも多くなっています。信託報酬は0.5%(税抜)と低コストなので中長期の保有にも向いています。最低購入単位は10口で4,000円前後(※)となっています。

ETFS原油上場投資信託(証券コード:1690)

DJ-UBSWTI原油商品指数をベンチマークとしています。他のETFとは少し異なり、日本に上場しているが外国投資法人が発行する外国投資証券の位置づけになります。日本以外に欧州でも上場されているETFです。信託報酬は0.49%(税抜)と低く設定されていますが、出来高も少なくあまりおすすめはできません。最低購入単位は10口で10,000円前後(※)となっています。

※2017年2月3日現在の価格

国内ETFレバレッジ・インバース型

積極的にトレードしたい方におすすめの銘柄です。初心者にはおすすめはしません。

NEXT NOTES日経・TOCOM原油ダブル・ブルETN(証券コード:2038)

原油価格の2倍の値動きとなるレバレッジ型です。原油が1%上昇したら2%上昇し、反対に原油が1%下落したら2%下落するよう設計されており、1口1000円前後で購入できます。

NEXT NOTES日経・TOCOM原油ベアETN(証券コード:2039)

原油価格の逆の値動きとなるインバース型です。原油が1%上昇したら1%下落し、反対に原油が1%下落したら1%上昇するように設計されています。値動きの激しい原油なので、いわゆる値下がり場面でも利益を狙いたいという積極的なトレーダー向けの銘柄です。1口1万円前後で購入できます。

海外ETF

外国株の取引を取り扱っている証券会社ならば、海外の取引所に上場されているETFを直接購入することができます。海外ETFは種類が豊富なため、原油関連で代表的なものを紹介します。

海外ETFは、コスト面では外国株式の売買手数料の他に現地通貨建てとなるため外貨交換手数料が発生することと、外貨交換時の為替レートによって投資元本そのものが為替リスクに直面するというデメリットがあります。外貨で長期投資を考える人には向いていますが、短期、中期のトレードには不向きとなります。

ユナイテッド・ステーツ・オイル・ファンド WTI原油連動ETF(ティッカー:USO) 

ニューヨーク証券取引所に上場されているWTI原油先物価格に連動するETFで、原油関連では世界最大規模のETFです。2月3日現在の価格はおよそ11ドル、1ドル113円とすると約1,200円です。

エネルギー・セレクト・セクターSPDRファンド(XLE)

原油そのものへの投資ではありませんが、間接的な原油投資として代表的なETFです。

アメリカのエネルギー関連企業ETFで最大規模。エクソンモービル、シェブロン等を始めとした石油関連銘柄企業で構成され、近年資源や原油価格の動向に注目が集まっている中、アメリカのセクター別ETFの中でも、変動率、出来高ともに注目を集めています。2月3日現在の価格は約76ドル、1ドル113円とすると約8,500円です。

原油ETF投資で注意すること

原油ETFへの投資は現物取引なのでミドルリスク・ミドルリターンの投資に分類されますが、原油価格そのものが需給バランスによって上昇下落を繰り返していますので、株式とは異なり、長期間右肩上がりの上昇を期待することが難しい商品です。これはコモディティの特徴ともいえますが、原油ETFへの投資は原則1年未満の中期投資をイメージして、長期間放置しないよう注意してください。

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もう少しリスクをとって投資したい人におすすめの投資方法

ETFがリスクを抑えて原油に投資したい時に向いた金融商品であることはお分かりいただけと思います。でも、それではちょっと物足りない、もう少しリスクをとってでも利益を狙いたいという人におすすすめの投資方法があります。それがCFD(差金決済)取引で原油ETFに投資する方法です。

CFD(差金決済)取引とは

FX取引と同様の証拠金取引で、個別株式や株価指数、商品などを現物代金に比べて少額の証拠金で取引することできます。業者により取扱商品は多種多様ですがETFも多数あります。ETFは個別株式の一つとなり、レバレッジは最大5倍までかけることができます。WTI原油ETFにレバレッジ5倍で投資する場合、1口約300円で投資することができます。

海外ETFにCFD取引で投資するメリット

国内業者が提供するCFD取引であれば、投資金をいちいち外貨に交換する必要もないので当然外貨交換手数料もかかりません。売買手数料は業者により異なりますが、一般的に証券会社を通じた外国株式の売買手数料より安価となっています。そして、レバレッジ5倍までかけられるので、現物よりも高いパフォーマンスを追求できます。投資元本の毀損を嫌気する人にはおすすめしませんが、エキサイティングな投資を志向する人には短期トレードも楽しむことができます。
ただし、ポジションを翌日に持ち越す際には金利調整額の支払いが発生するので、ご注意ください。

WTI原油連動ETFにレバレッジ5倍で投資した場合

※10口、購入価格11ドル・売却価格16ドル(利益5ドル)、1ドル113円で計算

投資金1口購入金額購入口数利益
レバレッジ1倍約12,500円約1,250円10口5,650円
レバレッジ5倍約12,500円約250円50口28,250円

※レバレッジをかけた場合、価格が下落すると投資金以上の損失が発生する可能性があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。一見ハイリスクと思われがちの原油投資ですが、ETFで投資すれば少額かつリスクを抑えた運用をすることができます。現物ETFでは物足りないという場合には、レバレッジ・インバース型やCFD取引でETFに投資するなど、いくつかエキサイティングな投資手段もあります。ご自身の投資志向に合わせて選んでみてはいかがでしょうか。