「ピーク・デジタル」に注意を払うこと

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■新型コロナで変わったこと

新型コロナは我々の行動を変化させました。在宅勤務はその一例ですし、旅行に行く機会が減ったことも指摘できます。その反面、家でストリーミング・ビデオを楽しむとかネット通販でモノを購入するなどデジタル消費が増えました。

それらのうち、あるものは「もう二度とコロナ前には戻らない」恒久的な変化である一方、新型コロナが収まればある程度昔に戻るものもあるでしょう。

■新型コロナが一段落すれば…

新型コロナワクチンが完成すれば、これまで外出を我慢していた消費者は堰を切ったように外食を楽しみ、旅行に出るかもしれません。その反面、家でストリーミング・ビデオを楽しむとかネット通販による消費はしばらく顧みられなくなるというシナリオも考えられます。

■これまでの変化

アメリカでは新型コロナの怖さが広く認知されはじめた3月16日の週から消費者の行動にドラマチックな変化が見え始めました。クレジットカードによる毎日の買い物額が前年比で-40%も落ち込んだのです。人々は外出を止め自宅に籠るためスーパーマーケットで食料品を買い込みました。だからスーパーの売上高は前年比+100%を記録しました。

お店のレジでクレカにより支払いをする金額は前年比-50%に落ち込みました。ネット通販も一時前年比-20%に落ち込みました。

しかしネット通販は4月末までには前年比±0%に戻り、それ以降はむしろ前年比+10%くらいで推移しはじめました。つまりデジタル消費の態度が常態化したのです。8月21日の時点でのデジタル消費は前年比+8%で推移しています。

一方お店のレジでクレカにより支払いをする金額は戻りが鈍く、現在でも前年比-20%で推移しています。

■小売業者の決算

先週まで米国の小売店、専門店が相次いで第2四半期(5月~7月期)の決算を発表していました。どの業者もデジタル売上高が極めて好調でした。そのひとつの理由はデジタル消費の態度が常態化した以降の3ヵ月を、第2四半期がスッポリと捉えていたことによります。言い直せば、比較感で「いちばん良く見える」期間がきれいに数字に反映されていたということです。

いまのところデジタル消費は好調で、トレンドに変化は見られていません。したがって次の第3四半期(8月~10月)も同様の好決算が出る可能性が高いです。

■ピーク・デジタル

しかしそれ以降となると、新型コロナワクチンが完成するというシナリオ下ではデジタル消費の前年比成長率が鈍化するリスクが増大します。つまり「ピーク・デジタル」の心配をしなければいけないということです。とりわけ来年の第2四半期は今年が素晴らしい数字だっただけに苦戦を強いられることが予想されます。

■変化の「先食い」

もちろんリアルからデジタルへの移行というのは時代の流れであり、長期の趨勢としては今後もネット通販の比率は上昇すると考えられます。

たまたま新型コロナが襲ったので外出できなくなった消費者がネット通販に依存せざるを得なくなり、そのぶん長期的な変化が一度に到来する「先食い」が起きたという風にも理解できるでしょう。

言い直せば、足下でのデジタル売上成長の好調はコロナで「下駄をはいている」のです。

■「2000年問題」の苦い思い出

今から20年前に年号が1999年から2000年に変わろうとするとき、「古いメインフレーム・コンピュータのプログラムは000という数字に対応してないので色々な局面で不具合が生じるかも?」という不安が頭をもたげました。だから年号が2000年になる前にコンピュータ・システムを刷新しようという特需が起きたのです。

しかしふたをあけてみると2000年に年号が変わったからといってコンピュータが止まるというような混乱は起きませんでした。

みんながホッと胸を撫で下ろしたとき、需要の「先食い」が起きてしまったことに投資家は気が付きました。パッタリと設備投資が止まり悪い決算を発表するハイテク企業が続出したのです。

今回のデジタル消費の隆盛は「2000年問題」とは少し性質が異なるので同じ土俵で比較することはできないと思います。

でも宅配ボリューム増に対応するため通販業者や運輸会社が重複する過剰投資を行うなど、ムダが散見されるのも事実です。

そろそろ将来の「ピーク・デジタル」のリスクについても注意を払いはじめるべきだと思います。